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第282回 HONEYBUS "Story"

HONEYBUS - "Story"
1969 UK-DERAM SML1056
(Beat Rock)

RARE:★★★★

Member :

Ray Cane(vo,g,key,b), Kelly Kircher(vo,g),
Colin Hare(vo,b,g)


Side (A)
1. Story
2. Black Mourning Band
3. Scarlet Lady
4. Fresher Than The Sweetness In Water
5. He Was Columbus
6. Ceiling No.1


Side (B)
1. Under The Silent Tree
2. She's Out There
3. She Said Yes
4. I Remember Caroline
5. How Long
6. Ceiling No.2


ソフトロックという言葉はこのグループのために準備されたと言っても 過言ではないでしょう。

ピート・デロコリン・ヘアという ブリティッシュ・フォークの偉人を輩出した今や伝説とされている グループです。本作はそんな彼らの伝説の(くどい!)デビュー作です。

そのピート・デロは、グループを作っておきながら、デビュー作の 発表時には既に脱退してしまったという、ちょっと無責任な印象があるものの、残されたコリン・ヘア、レイ・ケーンがそんな逆境を バネにしたかどうかは分かりませんが、ピート・デロの突然の脱退により、 ロクなものにならないのではないか、という大方の予想に反し、ソフト・ ロック史に残る素晴らしい一枚となりました。

A-1のイントロのとてつもない古めかしさからして、もうセピア色一色。

最初の一音は昭和歌謡のような、しみったれそうな危険性を秘めながらも そうならないギリギリの徳俵でこらえきった感じで、曲が進行していく ほどに英国臭がどんどん滲み出てくる、甘酸っぱくもくすんだ英国色に 見事に染め上がった驚愕の名曲だと思います。

そういう意味では昭和歌謡の場末と、くすんだ英国は似て非なるも 境界線は実は紙一重なのと新たな発見もありました。

アルバム全体を通して言える事ですが、特にこのあたりの60年代の サウンドは、初めて耳にしてもなぜか懐かしさがこみ上げてくるから 不思議です。

69年という発表年度の美味しさもあり、ブリティッシュ・ビートの面影も そこはかとなく残っているところが、まさにこの時代にしか生み出され なかったであろう一瞬の輝きを捉えた一枚と言えるでしょう。

B面はややコリン・ヘアの色が強くなり、この後の彼の名作(必携) ソロ・アルバムに相通ずるグレイトな曲のオンパレードです。

そしてプライベートで撮ったものかと思う程、自然な雰囲気なのに印象深いジャケットは、名盤であることを約束されたような味わい深い 仕上がりで、当時の雰囲気がそのまま伝わってきているだけでなく、 当の御本人たちは、今もこんなところでつるんでいそうな気さえします。

酒飲みながら『ロックとは!?』みたいな熱い話をするのなら、こんな 雰囲気を作ってみたいところです。

(2008.03.30)