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第269回 CARAVAN "Same Title"

CARAVAN - "Same Title"
1969 UK-VERVE SVLP6011
(Progressive Rock)

RARE:★★★★★★

Member :

Richard Coughlan(ds), Pye Hastings(g,b,vo),
David Sinclair(key,vo), Richard Sinclair(b,g,vo)


Side (A)
1. Place Of My Own
2. Ride
3. Policeman
4. Love Song With Flute
5.
Cecil Rons


Side (B)
1. Magic Man
2. Grandma's Lawn
3. Where But For Caravan Would I



キャラバンの数ある作品の中でも異色の一枚であり、カンタベリー音楽の 最高峰に君臨する一枚です。

2作目以降のキャラバンしか知らない人にとって、これはもう別の グループと言っても良いくらい異なった音色のサウンドで、逆にこの 1stが気に入ったからといってそれ以降の作品が気に入るとは限らない、そんなアルバムです。

神秘的な内容をそのまま表したかのような古代ローマを彷彿させる ジャケットのデザインも素晴らしく、一目見たら忘れられない位の インパクトにコレクター魂がくすぐられます。遠くにひそかに駱駝がいる ところを見つけると思わずニンマリせずには居られません。

ただ、私のような俗世界に住む人間にとっては、やや崇高すぎるのか、 ジャケットを飾るメンバーのコスチュームが、サイズの合わないパジャマ のようにも見え、映画『シックスセンス』で主人公の少年が見ていた 霊のような不気味さと、ちょっぴりのダサさを兼ね備え、そんなダサさと 同時に妙に高尚な雰囲気もあって、飾っておきたくなるような芸術性を 感じさせる不思議なジャケットなのです。

さて、肝心のサウンドはと言うと、プログレとサイケの中間を行きながら 思いっきり古さを感じさせるもので、またその古さが年季モノの骨董品の ような光沢を放っており、後期の作品とはオリジナル盤のプレミアムが 桁ひとつ違うコレクターズ・アイテムになっているというのにもうなずけます。

エッグ(EGG)の1stのほんわかほんわかしたあの雰囲気と骨董的音色に 魅力を感じた人には絶対にお薦めしたい作品です。

A-1がこのアルバムのハイライトなのですが、出だしのドラムス連打で まずは一回目のスリップダウン。音が実にやわらかいのです。そして更に やわらかい頼りなげなヴォーカルも、ハマる人にはたまらない肌ざわりではないでしょうか。

ドラムスの微妙に湿った濁った音色も和太鼓系の響きは、ブルー・チアー (BLUE CHEER)っぽくて、いい感じです。

それに加えてこの古めかしいオルガンの音はどうですか!

こんな音、最近の楽器では絶対に出ないのではないかと思います。

頼りなげなヴォーカルも全編ずっと頼りなげで、力強い展開にはならないので妙に安心して聴いていられます。

こういう音の作品というのは夜中に徹夜仕事しながら、目の奥が疲れた 状態で聴くのにはぴったりで、音が優しくて、それでいて明るくなく、 小さな音で聴いても魅力が落ちない、こういうのはありそうで なかなかないと思います。

間違いなく当時にしか存在しえないアルバムです。

静かな部分になればなるほどブリティッシュ臭がにじみ出てしまう、 もうマニアには必携のアルバムです。

(2007.11.10)