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第250回 FORMULA 3 "La Grande Casa"

FORMULA 3 - "La Grande Casa"
1973 ITALY NUMERO UNO DZSLN55655
(Progressive Rock)

RARE:★★★★★★

Member :

Alberto Radius(g,vo,b), Tony Cicco(ds),
Gabriele Lorenzi(b,vo)


Side (A)
1. Rapsodia Di Radius
2. La Cilegia Non E'Di Plastica
3. Liberta' Per Quest'uomo


Side (B)
1. La Grande Casa
2. Cara Giovanna
3. Bambina Sbagliata


Dies Irae(怒りの日)というえらく重たいタイトルでえらく重たい内容のアルバムでデビューした彼らの4作目でありラストのアルバムです。 (再結成後の作品は除く。)『神秘なる館』という邦題が付けられました。

2ndアルバムでは割と軟化した普通のイタリアン・ロックを披露しており、そのまま終わっていればプログレ・マニアから騒がれることはなかったの でしょうか、続く3作目『Sognando E Resognando(夢のまた夢)』で一気にプログレッシヴな内容に進化します。

あまりにも一気にプログレ寄りにアクセルを切ったため、行列のできる腕の良いラーメン屋の店主が突然フレンチのフルコースを料理したかのよ うな感じで、うまいんだけど、なんだか違う、でも微妙に良くてまた聴きたくなるという、その3作目は不思議な荒々しさにあふれたプログレ作品に仕上がっています。

いきおいだけでシンフォニックに仕上げたせいで、全体的なまとまりはないのですが、ところどころに聴かれる劇的な展開は、泣きに弱い 日本人をとりこにするに十分な内容で、芸術性が中途半端に高そうな微妙なジャケットとあいまってなんとも忘れがたい作品です。

そして、その後に発表された今回ご紹介のこの作品でラーメン屋色は完全に消え、イタリアン・シンフォニックの王道を行く耳の肥えた マニアをも唸らせる作品となっていきます。前作3rdから未熟でばらけた感じの部分をきれいに排除し、彼ら本来の持つ研ぎ澄まされた感性を 包み隠さず表現した、まさに『神秘なる館』です。

楽器が云々、テクニックが云々なんてことは本質的には音楽にはあまり関係がないんだ、などという当たり前のことを改めて痛感させられる アルバムです。

A-1の出だしのアコースティックの爪弾きの瞬間に、朝靄の立ち込める高原の草場のつゆに一気に瞬間移動してきます。そして一瞬まばゆい光が 差したかと思うと、しっとりとしたヴォーカルが全てを包み込むのです。こんなにしっとりしていいんですか、いいんです!!(ふ、古い・・)

更にここからがまた美しく、もうどの曲がどうだなんてことを超越した一体感で、流れに身をまかせているだけで幸せになれます。私のように、 毎日満員電車に揺られ、パソコンに向かって一日仕事に追われている環境では絶対生まれ得ないメロディだな、と思うとまた一際の感慨に 浸れるのであります。

アルバムを聴き終わった後に内ジャケを広げると、まさしくそこにはアルバムの世界そのものが広がっていました。 秀逸な内ジャケです。


(2007.04.20)