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第243回 ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA "Same Title"

ELECTRIC LIGHT ORCHESTRA - "Same Title"
1971 UK HARVEST SHVL797
(Progressive Rock)

RARE:★★★★

Member :

Roy Wood(vo,g,b), Jeff Lynne(vo,key,g,b), Bev Bevan(ds),
Bill Hunt(horn), Steeve Woolan(violin)


Side (A)
1. 10538 Overture
2. Look At Me Now
3. Nellie Takes Her Bow
4. Battle Of Marston Moor


Side (B)
1. 1st Movement
2. Mr. Radio
3. Manhattan Rumble
4. Queen Of The Hours
5. Whisper In The Night



ELOというと80年代のオリビア・ニュートン・ジョンOlivia Newton- John)との合作『ザナドゥXANADU)』でも有名ですが、それから遡る こと10余年の1stアルバムは、シアトリカルな雰囲気を漂わせながらも プログレ・ファンにも十分通用する出来栄えです。

そもそもELOは、元ムーヴMOVE)のロイ・ウッドジェフ・リンという 天才2人が71年に結成した世界に誇る異色のブリティッシュ・プログレ・ バンドで、一種独特のエレクトリックな世界に、時代を感じさせる ヴァイオリンが複雑に絡み合っているという、この1stのとてつもなく 不思議なサウンドは、『デビュー・アルバムにしてこれか…!?』と 末恐ろしさを感じさるものです。

ライヴ映像を観たことがあるのですが、専属ヴァイオリニストが一人 横に立って演奏しているというのが、とにかく不思議な感じで、なかなか 新鮮な違和感もありました。

ヴァイオリンの音はイタリアのプログレやエスペラント(ESPERANTO)の ような室内楽的なものではなく、あたかも硬い岩盤をガリガリと削り とるかのような力強さがあり、そしてこれが全編に亘って大活躍!

曲でいえば、A-1が最も衝撃的です。私には。

まるでアバABBA)の『ギミー・ギミー・ギミーGimmie, Gimmie, Gimmie)』のイントロに、ビートルズの『ストロベリー・フィールズ・ フォーエバー』のような硬質なヴァイオリンが哀愁たっぷりで入ってくる 様は限りない可能性を感じさせてくれます。

更に異色なのがB-4。縦ノリのヴァイオリンが攻めまくる不思議極まりないサウンドは、まさに『今まで耳にしたことがない』曲です。

全体的にメロディアスといえばメロディアスだし、実験的と言えばそうとも言える、なんとも一言では紹介しづらい作品でもあります。

この後も水準の高い独特の作品をリリースし続けますが、この作品の発表後、ロイ・ウッドがすぐに脱退してしまうので、不思議極まりない 独特の雰囲気はこのアルバムならではのものとなってしまいます。

個性的なグループが多い70年代のブリティッシュ・ロック界においても、このグループは特に個性的だと思います。こんなこと演っていても ロックになるんだな、と感心してしまいますね。

アヴァンギャルドでもなく、暗いわけでもないのですが、決してカーステでは楽しめない、そんな作品です。

ついでのようですが、ジャケットがまた秀逸で、モノクロの 内ジャケも必見です。

(2007.02.10)