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第237回 DUNCAN MACKAY "Score"

DUNCAN MACKAY - "Score"
1977 UK EMI EMC3168
(Progressive Rock)

RARE:★★★

Member :

Duncan Mackay(key), Steve Harley(vo),
John Wetton(vo), Clive Chaman(fb), Mel Collins(flute),
Andrew McCulloch(ds)


Side (A)
1. Witches
2. Triptych
3. Spaghetti Smooch
4. Time Is No Healer
5. Fugitive


Side (B)
1. Score
2. Pillow Schmillow
3. Jigaloda
4. No Return


コックニー・レベルCOCKNEY REBEL)のキーボード奏者の1st ソロ・アルバムは、コックニー・レベルとは大きく趣きを異とする壮大な プログレッシヴ・ロック・シンフォニーで、そのジャケのベタさから敬遠する向きもあるようですが(私がそうでした)、長く愛聴できる奥の深い作品で、頭があがらない人から薦められでもしない限り きっと聴く機会のない、そんな作品でもあります。(私がそうでした)

小学校のとき「おい、何をぼけっとしとるんだ!?腐った魚のような目をしやがって!」などと先生に言われたものですが、そんな目とでも言うのでしょうか、ジャケットに映った本人の顔たるや、冴えない事、この上ありません。

しかし、そんな目はさておき、内容はというと、これが腐っていない!

怒った先生も土下座もんです。
最近の人はみな”ダウンロード”なので、そういう風景はあまり見かけなくなりましたが、要するに、試聴一発ツモ、ドラなしって感じで、店頭で聴かせてもらった日には即リーです。

そして即リーはさておき、肝心の内容ですが、のっけからのピアノのシンフォニックで流麗な流れはどうですか!?みなさん!!
もうその大袈裟なイントロにプログレファンならずとも鼻血の洪水にむせびます。

続いて炸裂するどこかで聴いたような力強いドラムスも、絶対に両手で スティックを2本そろえてタムタムを叩いているに違いないカッコよさ で、これぞブリティッシュ・ロック!
もうジャケットなんてどうでもいいぞ!と思いながら、この辺りでようやく改めてジャケを手に取り、メンバーを見たりするのですが、これがまた凄くて、このメンバーで悪いわけがありません。

更に、じわじわと迫りくるストリングスの繊細な美しさは極上のデカダンスで、『ベタ』という言葉とは対称に位置する旋律は、決して真夏の甲子園では聴いてはいけないスマートさを持ち合わせているのです。

中盤になってくると多種多様な楽器群が複雑に絡み合ってきて、高村薫の小説のような、めくるめく展開に何もかも忘れて身をまかせてしまいたい、そんな気分になります。印象的なフレーズのリフレインもできがよく、そのまま風呂に入れば口笛必至で、しかも風呂からあがってくるまで脳裏を離れないしつこさ、もとい美しさです。

メロディが親しみやすい上に楽曲の構成もよく、必要以上に無駄な要素を排除した研ぎ澄まされた内容は『感性に直接響いてくる』とでも申しましょうか。
そういう意味ではかの「チューブラー・ベルズTubular Bells)」 シリーズの最高傑作「チューブラー・ベルズ2」にも匹敵するもので、 あれが好きな人には絶対お薦めです。

この後、南アフリカから出した作品は激レアで、入手困難となっていますが、この作品のメロディがところどころ顔を出すこれまた傑作に仕上がっています。

(2006.11.30)