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第219回 ANGLAGARD "Hybris"

ANGLAGARD - "Hybris"
1979 SWEDEN COLOURS COSLP013
(Progressive Rock)

RARE:★★

Member :

Thomas Johnson(mellotron,key), Jonas Engdegard(g),
Tord Lindman(vo,g), Johan Hogberg(b,mellotron),
Anna Holmgren(flute), Mattias Olsson(ds)


Side (A)
1. Jordrok
2. Vandringar I Vilsenhet


Side (B)
1. Ifran Klarhet Till Klarhet
2. Kung Bore


ANGRAGARDは90年代の一大北欧シンフォニック・ロック・ブームを巻き起こした立役者です。この作品以降、数多くの北欧シンフォニック・ロック・グループが登場し、当時は来日まで果たすグループが出てくるという盛り上がり振りを見せていたものです。

この作品に出会って一番驚いたのは、90年代のくせに徹頭徹尾70年代にこだわっているところでした。ジャケット・デザインからして如何にも70年代の廃盤っぽいのです。しかも発売はLP。さらに見開きジャケット。 そして肝心の音の方がまた完全に70年!!92年の作品なのにメロトロンを使うか?フツウ・・・って思いませんか?

しっかりとしたリズム・セクションに支えられた大作志向の曲作りは、いかにもプログレ然とした感じのもので、あまりの70年代ぶりに、かえってオリジナリティに欠ける、との批判の声も当時は多く聞かれ ました。

アルバムの雰囲気からして、クリムゾンレッドあたりに相当影響を受けたんじゃないかと思われますが、時折イタリアン・プログレを強く 感じさせる部分もあり、イタリアでは特にムゼオ・ローゼンバッハMUSEO ROSENBACH)のアルバムに似た瞬間がところどころ見受けられます。 ただそこは北欧、イタリア独特のあの情熱はほとんど感じられず、北欧ならではの冷ややかな感じが全体を支配しています。

それにしてもこの作品、構想段階からじっくり時間をかけて練りに練って作り上げたんだろうなという感じがします。曲構成にしても、これだけ 緻密な作りというのは、逆に70年代ではできなかったものじゃないかと思います。

中でも曲展開と演奏パターンが実に複雑で一筋縄ではいかないものがあり、一聴しただけで舌を巻くリスナーも多いのではないでしょうか。静と動の コントラストも抜群、メリハリも強烈で、演奏水準も極端に高いです。

昔、音楽誌等でアルバム全体を点数評価するってやつをよくやっていたのですが、ご存知でしょうか。演奏技術が何点で、メロディが何点と いうやつです。あれを見ては『ほっとけヨ。おまえに採点されたないわ。』と突っ込みをいれるのが私は楽しみだったのですが、例えば あんな感じの点数評価をしたら、このアルバムは相当良い点がつきそうです。というよりとにかく減点する要素がない!

ということで、買った当時の私も『これはいいアルバムだ。なんて出来の良い作品なんだろう』って思ってはいたのですが、不思議なことにいい アルバムであることに間違いはないのに、どうしても好きにはなれないのです・・・。実は。

何と言うのか、素晴らしいことは素晴らしいんだけど、素晴らしいだけ、とでも言うのか、人間っぽさが感じられないというか、ロックの持つ 本来の熱い感じがないというか、感動がないというか。だから全然聴かないんですよね、これ。(おい)

決して『キライ』という訳ではないのですが・・・。

(2006.5.20)