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第208回 ALI GROGAN "Lliw Heulwen"

ALI GROGAN - "Lliw Heulwen"
1980 WALES SAIN 1305M
(Folk Rock)

RARE:★★★★★★★★

Member :

Dave Petersen(tabla,hand-ds), Bronwen Jenkins(flute),
Geraint Jones(vo,g), Jiwli Harries(vo,fiddle),
Phil Higginson(mandola,mandolin,fiddle)


Side (A)
1. Pibddawns Sir Gaerfyrddin
2. Lliw Heulwen
3. Rheged/ "Spanish Minuet"
4. Aderyn Pur
5. Llif Afon Taf
6. Lewsyn Yr Heliwr


Side (B)
1. Y Dyrnwr
2. Allt Y Caethiwed
3. Os Daw Fy Nghariad
4. Gwyl Ddewi/Mwynen Cynwyd
5. Y Gwydd
6. Rasus Fforest Fach


90年代後半から俄かに世界のコレクターの注目を浴び始めたウェールズの音楽です。コレクターが注目したのはウェールズの中でも、ペレリンPERERIN)やブランBRAN)といったフォークとプログレが融合した ような、よりドラマティック音のグループが中心でした。

それに比べて、今日ご紹介するアリ・グロガンもウェールズのフォーク・グループでありながら、プログレ色が殆どなくて、もしかしたら最もウェールズらしいグループではないかと思います。使っている楽器が 生楽器なので、それもプログレ色のない原因の一つなのかも知れません。

また、いわゆるアイリッシュ・トラッドのようなフレーバーが漂いながらも、アイリッシュほどの厳しさがなく、さりとてバスク・ミュージックほどの柔らかさもない、なんとも言えない微妙な味わいです。

スティーライ・スパンSTEELEYE SPAN)のようなトラッドの厳しさについていけずにブリティッシュ・フォークを挫折した人たちをも受け入れてく れるような優しさがウェールズの音楽にはあります。

私自身、初めてスティーライ・スパンの3rdを聴いたときは、Z会(行ったことないです、想像で言ってるだけです)のような厳しさに思わず腰をもとい、針を上げそうになったもんですが、そういう厳しさがウェールズ にはなく、とっつきやすさが日本人にも人気のある理由なんじゃないかとも考えています。

厳しいトラッドの良さっていうのは、たぶん木造のバーのカウンターでギネスを飲みながら聴くとかでもない限り本当にその良さは理解できないんじゃないでしょうか。

ちょっとそれましたが、このアリ・グロガンはリード・ヴォーカルの二人のフィメール・シンガーの歌声が『天上の響き』である上に、船戸与一の小説に出てくるような山岳地帯を彷彿とさせるフルートの調べ、そして 木靴を履いたアルプスの少女ハイジが駆け抜けるような躍動感が見事に調和した(?)アルバムで、木造のバーでも畳の自宅でも充分安心して聴ける作品です。

タイプこそ違え、個人的にはペレリンブランとも十分比肩しうる名盤だと思います。

そしてジャケット。

ウェールズにはこんな建物多いんですよ。私初めてウェールズに行ってその街並みの風景を見たときに思わず『これはまるでアリ・グロガン!』とつぶやいてしまいました。

個人的にはヴァシティ・バニヤンVASHTI BUNYAN)を超えるジャケだと思いますが、みなさん如何でしょうか。


(2006.1.30)