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第195回 POPOL VUH "Hosianna Mantra"

POPOL VUH - "Hosianna Mantra"
1972 GERMANY PILZ 2029 143-1
(Progressive Rock)

RARE:★★★★★

Member :

Popol Vuh(piano,Cembalo), Conny Veit(g),
Robert Eliscu(oboe), Djong Yun(sopran),
Klaus Wiese(tamboura)


Side (A)
Hosianna Mantra
1. Ah!
2. Kyrie
3. Hosianna-Mantra


Side (B)
Das V.Buch Mose
1. Abschied
2. Segnung
3. Andacht
4. Nicht Hoch Im Himml
5. Andacht


ジャーマン・プログレの特集モノには必ずといって良いほど紹介される このアルバムです。

さる有名プログレ専門誌で紹介された時には、紹介者があまりに深く入り 込んでいた為か、普通にレビューを読んだだけでは買っていいのかどうか さっぱりわからなかった私が、相当に思い切って買う事にした決め手は ジャケットの美しさがそんじょそこらのロック・アルバムとは一線を 画していた事でした。

が、内容はなかなか今まで聴いたことのないような世界で、買った当時は これを聴くには若すぎて、良いも悪いもよくわからずとりあえず棚に しまってみました、というのが正直なところです。

ただそれから何年もの間、就職とか結婚とか仕事での挫折とか 債務免除(!?)とかいろんな人生経験を味わった後に聴くと確実に 何かが伝わってくる作品ではあります。

そこにある音から何かが伝わってくるのではなく、言外とか行間に何かが 潜んでいて、聴く人それぞれの体調や気分等の状況によって感じるものが 違ってくる、そんな奥行きの深さがあります。

一聴した限りではちょっと宗教っぽい感じに引いてしまうきらいもあり、 タイ古式マッサージのBGMなんかで流れているような雰囲気で、 やや東洋の神秘みたいな印象もなくはないのですが、それでも マジック・カーペットMAGIC CARPET)ほどバリバリの東洋ではなく、 あくまでもゲルマン音楽の誇りと威厳を保っているところがすごいと 思います。

演奏している楽器はピアノにギターに女性スキャットというシンプル この上ない構成なのですが、例えば中華料理でも卵炒飯が一番難しいと 言われるのと同様に、物事を突き詰めていくと無駄が省かれる、などと いう表現がふさわしいのか、まさにどんどんシンプルになっていった 典型的な例といってもいいでしょう。

あんまり小難しいことばっかり書くと嫌われるので、この辺にしておき ますが、仕事や運動で疲れきっている状態でゆっくりと水平に横になって 聴くには最高の音楽だと思います。気が付くと針が上がっている事が 多いですが。

メロディがどうの、楽器構成がどうのとか盤のコンディションがどうのと かいう雑念欲望を全て捨て去って、心を無にして聴いてほしい音楽です。

人に聴かせたりすると、『おい、おまえ、あぶねえな。』とアブナイ奴の レッテルを貼られるのが落ちですので、自分だけで楽しんで下さい。 プログレともフォークともロックとも何かが違う不思議な世界です。 でも一気に最後まで聴けてしまうんですよね。大地と一体化できます。 (ヨガみたいだな・・・。)

入り込んで分かりにくい紹介になってしまっていないといいのですが。

(2005.08.30)