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第181回 MUSEO ROSENBACH "Zarathustra"

MUSEO ROSENBACH - "Zarathustra"
1973 ITALY RICORDI SMRL6113
(Progressive Rock)

RARE:★★★★★★

Member : 

Giancarlo Golzi(ds), Alberto Moreno(b,key),
Enzo Merogno(g), Pit Corradi(key),
Stefano "Lupo" Galifi(vo)


Side (A)
1. Zarathustra
- L'ultimo Uomo
- Il Re Di Ieri
- Al Di La' Del Bene E Del Male
- Supeuomo
- Il Tempio Delle Clessidre


Side (B)
1. Degli Uomini
2. Della Natua
3. Dell'eterno Ritorno



イタリアのプログレにはまった人でこれを聴いたことがない人はいないと言われる、ハマってない人にとってはどうでもいいのかというと、その辺がちょっと微妙な作品です。

ブリティッシュプログレで言えばクリムゾンの宮殿のようなアルバムで、これが日本に初めて紹介された80年代後半の西新宿は、もうお祭り騒ぎのような状態でした。

ただでさえかっこいいイタリア語のバンド名の中でも『ムゼオ・ルーゼンバッハ』というグループ名は特にかっこよく口に出すだけでバロックな気分に浸れてしまうのですが、邦題もまた『ツァラトゥストラ組曲』 なんていうカッコよさで、聴く前から既に勝負あり。

当時の国内再発盤のライナーによれば『ツァラトゥストラ』というのはニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』の主人公作品とのことで、なんとゾロアスターのドイツ語読みだとは今回の復習で初めて知りました。 学生時代に授業でニーチェの話なんか出てきても、なんの興味もなかったくせにこうやって好きなレコードの中で出てくるとしたり顔で興味を持ったりするんですから、人間、もといマニアというのは現金なもんです。

イタリアンプログレのほとんど入門用教科書のようなアルバムですが、ブリティッシュプログレでさんざん鍛えられてきている人でさえ、このアルバムのA面にはのけぞりをこらえることができないんではないで しょうか。

出だしのメロトロンでぬめりをとられたうどんのようになったところへ、マチュピチュの朝焼け(見たことあるのか?)を思わせるような奥ゆかしい静かな調べ。そして、プロコルハルムPROCOL HARUM)の ゲイリーブルッカーGary Brooker)がイタリア人になったような高貴なヴォーカルは、まるで山頂の上でふくろうを肩に乗せながら歌っているような荘厳な響きです。絶対に畳の上でコンビニの弁当を食いながら 聴いてはいけない最たるもので(食ったことあるクセに)、これぞ音楽の雅。

そしてその荘厳な歌が終わるや否やバカテクドラムスが本能寺の変の明智軍のように土足で我が家に上がりこんできます。この辺のドラムスの突撃感はツェッペリンの『天国への階段』のドラムスが入る瞬間の オルガズムにも相通ずるものがあり、これはハード系リスナーにとっても充分お酒を飲める展開です。

そこから始まるA面全体はこれでもかとばかりにドラマティックに変調を繰り返す、ヘヴィプログレッシヴの万華鏡的世界で、あしたのジョーに出てくる韓国人ボクサーの伝説の攻撃チョムチョムのように全く息つく暇 もありません。

そしてA面のエンディングがこれまた見事な内容で、A面全体を支配していたおなじみのメロディがゆるやかに奏でられます。それはまるで波動砲を打ち終わった後の宇宙戦艦ヤマトがゆっくりと地球に帰還するか のうような、じつに堂々としたエンディング。

今回は例え話が多すぎた感じがありますが、こんなに内容が良けりゃそりゃマニアも騒ぐわな、という例えても例えても例えきれ無い位の素晴らしい作品です。

A面に夢中でまだまだB面を聴きこなしてはいないのですが、そこまで聴かなくても充分満足できるアルバムだとも言えると思います。

(2005.04.10)