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第164回 UNO "Same Title"

UNO - "Same Title"
1974 ITALY FONIT LPX26
(Hard Rock)

RARE:★★★★★★

Member : 

Danilo Rustici(vo,g,b), Elio D'anna(sax, flute),
Enzo Vallicelli(ds))


Side (A)
1. Rigth Place
2. Popular Girl
3. I Cani E La Volpe
4. Stay With Me


Side (B)
1. Uomo Come Gli Altri
2. Uno Nel Tutto

3. Goodbye Friend



ウーノ』というとあの『ドロー・フォー』(つらいですよね)で有名なカード・ゲームを思い起こされる方もいるかも知れませんが、あっちはどちらかというと『ウノ!』って感じでしょうか。 こっちは『ウーノ』です。

このグループは元オザンナOSANNA)のメンバーがセッション・アルバムとして作ったものと言われていますが、そんなテンポラリーの作品とは思えない、素晴らしい水準となっていて、オザンナ・ファミリーの中でも 1、2を争う出来栄えの作品となりました。

オザンナのメンバーがいると言われないとわからないくらい洗練された内容ですが、時折ふうっと入るフルートの響きにはその面影を隠し切れないものがあり、相当耳のきくその筋の人が、このフルートの音で、 『さてはおぬしらオザンナの手の者だな。』と気づく程度で、一般の人にはまずわからないのではないでしょうか。(『オザンナを聴く一般の人』って居たのか?)

オザンナ特有の所謂、呪術、混沌、熱病(?)という要素は殆ど感られず、一言で言えば正統派イタリアンプログレなのでしょうが、かのチェルベロCERVELLO)をスペーシーにして更にもう少しアダルトに 仕上げ、ちょっぴりうるおいを垂らしてみました、みたいな感じですね。

ただ、だからと言ってアルバム自体の印象が薄いかというとそうでもなく、聴けば聴くほどに涙腺直撃の旋律のオンパレードとなっていて、A面1曲目なんぞは、大河の流れのようなウェットなギターのつまびきに、哀愁泣き 泣きヴォーカルがささやき、そよ風のようなフルート、そこにふんわりやわらかなドラムスがリズムをきざみ、天空高く舞い上がるキーボードでまずは一回目のクライマックスです。

そしてサビになると晩年のジェフ・ベックばりの硬質なギターが縦に入ってきて、興奮のあまり思わずグーを握ってしまいますが、そこに酔拳のようなふらふらサックスが絡みついてくるというもう大変な展開。このあたりまで聴いただけで、『買ってよかったわ。』と、つい家族にまで声をかけてしまう自分がいました。

そしてA-2はなんとなくふつうな感じの気だるいロックという感じで、『ああ捨て曲か。(失礼な)』と油断していると、突然何を思ったか嵐のようなフルートソロが始まります。『ちょっと、やってくれる じゃないの〜。』と思わずクネクネしてしまいます。

ふつうのロックファンが聴くとなんてことないアルバムかも知れませんが、イタリアンプログレの深みに一度でも思いっきりハマったことのある人には狂喜乱舞のアルバムだと思います。

見学して楽勝だと思って参加したら予想以上に疲れてしまったアクア・ウォーキング(でしたっけ?プールの中歩くやつ)とかの良さに近い、読んでみるのと買って聴くのじゃ大違いのアルバムだと思います 。


(2004.10.10)