BACK TO HOME

第159回 BRAN "Ail-Ddechra"

BRAN - "Ail-Ddechra"
1975 WALES SAIN 1038M
(Folk Rock)

RARE:★★★★★★★★★★

Member : 

Nest Howells(vo,key), John Gwyn(g,vo), Gwyndaf Roberts(g),
Dafydd Meirion(ds,flute)


Side (A)
1. Y Ddor Ddig
2. F'Annwyl Un
3. Y Gwylwyr
4. Wrth Y Ffynnon
5. Myfyrdod


Side (B)
1. Rhodiaf Hen Lwybrau
2.
Mor Braf
3. Caledfwich
4. Blodyn
5. Y Crewr
6. Breud Dwyd



ブリティッシュ・フォーク最後の秘境として近年になって次々と発掘が されたウェールズ。そんなウェールズの作品の中でもペレリンPERERIN)、 カレイグ・アオネアCARRAIG AONAIR)、と並ぶ3大ウェルシュ・ フォークのひとつがこのブランです。

ブランは、3大ウェルシュ・フォークの中でもオリジナルアルバムのレア度という点では最も入手が困難で、マニアライクな素晴らしい ジャケットアートもコレクター心をくすぐります。それまで普通のブリティッシュ・フォーク(というかイングリッシュ・ フォーク)しか知らなかったフォークファンにとってはウェールズの音楽というのは正に黒船到来、格闘技界のグレイシートレイングレイヴィー・トレインではありません)といった感じで、当時はかなり度肝を抜かれたものでした。

さてこのブランの肝心のサウンドの方はというと、ペレリンカレイグなんたら(おいおい)のように整合感のとれたものではなく、色んな作風の曲がゴッタ煮のように詰めこまれた作品です。特にA-1はのっけから男性ヴォーカルとギターがギンギンにせまる曲で、初めて聴いた時は『中身間違っとれへんか、おい!』と思ったくらいフィメールフォークとは無縁の世界が広がります。

それでもサビで メロトロンとフィメールヴォーカルがバックを盛り上げているところで、ちょっと今まで聴いたことない音楽だなと思いはじめ、そしてA-2。この辺からいよいよ本領発揮で、この曲の出だしのヴォーカルを聴いた段階で、これはただ事ではすまないなということにようやく気がつき始め ます。

黄泉(ヨミ)の国のお花畑で天使が蝶々を追いかけているような 可憐さとミステリアスさを合わせ持った不思議な感覚の曲で、世界で 5指に入ると言っても過言ではない必殺のフィメールヴォイスはノックアウト間違いなし。バスクのイツアールITZIAR)をも超越した素晴らしい歌声で、この手の癒し系では世界最高水準ではないでしょうか。いわば、エンヤが10人 束になっても敵わない天上の響きで、宇宙戦艦ヤマトに出てきたテレサが 地上に降りてきてそのまま歌ったらこうなる、みたいな超神秘的な声なのです。

アルバム全体では、なぜかところどころA-1のようなハードな曲が数曲 収録されていて、その度にいちいち『なんでじゃ』と突っ込まなければいけないのにはちょっと疲れますが、そんな小っちゃなことなんかもう どうでもよくなるくらい、彼女がリードヴォーカルをとっている曲は 素晴らしいですね。

後半に行けば行くほどに曲自体も素晴らしさを増し、B-1に至っては もう最初から鳥肌&聴衆立ちっぱなし、鼻血の大洪水という大変な状況。 2番に入ると神が演奏しているんではないかというくらい荘厳な弦楽器も登場し、その上メロディも一級品とくるから、全く手におえません。

そして、クライマックスを飾るに相応しい、ウェールズを代表する名曲の B-6は、イントロのピアノの響きとギターの泣きで、勘弁してくれ状態に なります。が、ヴォーカルが入った瞬間に今日自分が何をして過ごして いたのか全くわからなくなり、意識がだんだんと遠のいて、気がつくと、レコードの針はもう上がっていて、部屋にひとり横たわっている自分に 気がついたのでした・・。(って、うたた寝しただけじゃないのか)

(2004.08.10)