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第147回 FREE  "Fire And Water"

FREE - "Fire And Water"
1970 UK ISLAND ILPS9120
(Hard Rock)

RARE:★★★

Member : 

Paul Rodgersl(vo), Paul Kossof(g),
Andy Fraser(b), Simon Kirke(ds)


Side (A)
1. Fire And Water
2. Oh I Wept
3. Remember
4. Heavy Load


Side (B)
1. Mr.Big
2. Don't Say You Love Me
3. All Right Now



ブリティッシュ名ヴォーカリストの5指に入るといわれているポール・ ロジャースと、ブリティッシュロック史上最も個性的な音色を奏でる 孤高のギタリスト、ポール・コゾフを擁する伝説のグループ。

今から20年くらい前、ユニーの1階のレコード屋でお店の人に 薦められて聴いたのが名曲『ファイアー・アンド・ウォーター』でした。 こんな風に書くと西新宿のそれ系の中古レコード屋みたいなのを連想され るかもしれませんが、実は松田聖子のポスターが貼ってある、ツタヤ みたいな超フツウのお店で、今から思えば、そんなんかけてた店員って 随分根性があったのか、彼にとってはこの曲も松田聖子並だったのか・・。 他にはブラインド・フェイスとかアル・クーパーの『フィルモアの奇蹟』 なんかも聴かせてもらいましたっけ。

そんな話はさておいて、フリーといえば『オール・ライト・ナウ』が有名 ですが、私的にはこのアルバムの冒頭に収録されている『ファイアー・ アンド・ウォーター』が一番好きで、特にポール・コゾフの名を 世界中に知らしめた必殺のギターソロは卒倒必至。

弾いてから泣くのではなく、泣いてから弾くと言われているこの独特の スタイルはあまり他に例がなく、真夏の夜寝ているところに遠くから やぶ蚊が近寄ってくるようにじわじわとソロが始まり、そこから幾十も ニスを塗り重ねていくように泣きが重ねられていく展開で、好きな人には 本当にたまらない世界です、これは。

フリー時代のこの人のギターソロを映像でみたことがあるのですが、この 人、ソロの時に口をカアーッと開けた鬼気迫る表情でギター弾くんですよ。 知らないでみると(ってどんな状況か不明ですが?)まるで口から音を 出しているような感じで、これがあの泣きの音色を出すコツなのか、 それともそんなにまで力が入っているのか、はたまたドラッグの摂取量が 多すぎてつらかっただけなのか、今となってはさだかでありませんが、 でもそれが不思議とかっこいいんですよね。

それからB-1。この曲はポール・コゾフのギターとアンディ・フレイザーの ベースが真正面から向き合ってタイマンを張る間奏部分が凄まじく、 フレイザーのベースラインもかなり個性的です。 この頃この人確か10代だったんじゃないかと思いますが、そう思うと すごいっすね。この人のベースって1ヶ所にじっとしていられないような こうもりが空を自由に舞っているような不思議な演奏で、そのバックを 『オレはテクニカルには走らないぜ。』とばかりに男気満点のサイモン・ カークのドラムスがたんたんと進行していきます。

ポール・ロジャースはフリーの後、栄光のバッド・カンパニーを結成し、 そこではフリーからは考えられないくらい派手でメロディアスで豪快な 作品を披露しています。 若いブリティッシュロックファンにとってはバッド・カンパニーの方が かっこよくて聴きやすく感じるかもしれませんが、10年単位で聴きこむと 断然フリーの方がよくなってくるんですよね。不思議と。


(2004.04.10)