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第142回 HUMBLE PIE "Same Title"

HUMBLE PIE - "Same Title"
1970 UK A&M AMLS986
(Hard Rock)

RARE:★★★

Member : 

Greg Ridley(b,vo), Steve Marriott(g,key,vo), Jerry Shirley(ds), Peter Frampton(g,key,vo)


Side (A)
1. Live With Me
2. Only A Roach
3. One Eyed Trouser-Snake Rumba
4. Earth And Water Song


Side (B)
1. I'm Ready
2. Theme From Skint -
See You Later Liquidator
3. Red Light Mamma, Red Hot
4. Sucking On The Sweet Wine



「ロックの王道を行け!」で色々なレコードを紹介してきていますが、 実は私が一番好きなのはこのハンブル・パイHUMBLE PIE)です。 邦題は『大地と海の歌』という大袈裟なものです。

神が降臨したんじゃないかというくらい衝撃的だったスティーヴ・マリオットSteve Marriott)の歌声をFMラジオで初めて耳にしてから はや20年。渋谷陽一さんのレッド・ツェッペリン状態(これも凄い) じゃないですけど、ことこのグループに関しては思い入れが強過ぎて まともに評価できる自信がありません..。

ハンブル・パイというと世間ではライヴ・アルバム『パフォーマンスPerformance:Rockin The Fillmore)』が最高傑作といわれており、私もそれには全く同感なんですが、ここで紹介する3rdアルバムもそれに 優るとも劣らない内容です。

特に前作『タウン・アンド・カントリーTown And Country)』が アメリカっぽいカントリー風な作りだったのに対し、このアルバムは 100倍くらいブリティッシュ色が強くなっており、後に内輪喧嘩を起こす スティーヴ・マリオットピーター・フランプトンPeter Frampton)も まだ良い関係のようで、彼らの作品中バンドとしてのまとまりも一番いい のではないでしょうか。ちょっと横道にそれますが、よく『タウン・アンド・カントリー』を 最高作として紹介している音楽誌がありますが、悪いアルバムではないのですけど、『ちょっとそれはないんじゃない!?』って言いたくなります。 あの路線で言えばまだ1stの方が面白いと思うし、この3rdと較べたら 雲泥の差だと思うんですがね..。他のアルバム聴かずに紹介している んじゃないかと疑いたくなります。

さてこのアルバムですが、マリオットのヘヴィーなナンバーとフランプトンのアコースティックなナンバーが交互に配置されている ところはなんとなく思惑みたいなものを勘ぐってしまいますが、その割にはわざとらしさは感じられず、ロックミュージシャンとしての 貫禄すら漂うさまは、私の贔屓目な部分を除いたとしても、この手の作風としてはツェッペリンの3rdに匹敵する出来といってもいいでしょう。

またヴォーカルの取り方が、マリオットの独壇場(これはこれでワタシは 好きです)となってしまう後期ハンブル・パイに較べ、この頃の彼らは ヴォーカルを3人(マリオットフランプトンライドリー)で交互に ヴォーカルとっており、これが以外と絶妙のバランスを保っているんです。いくらチャーハンが好きだからといっても、チャーハンばっかり食べ 続けるよりも、麻婆豆腐を食べたり、青椒肉絲を食べたりしながら、チャーハンを食べるとチャーハンの美味しさも増すというものですが、このアルバムのヴォーカルはそれに近いものがあります。(ちなみに スティーヴ・マリオットがチャーハンです)

これを買ったばかりの若い頃はそんな人生の機微(そんなえらそうなもの ではありませんが)もわからず『たっ・・たのむから、スティーブ・ マリオット、もっと唄ってくれえ〜。そっそんなバックにまわっとらんくていいから前に出て唄ってくれえ〜。』なんて大人気なく喚き チラしたりしていましたが、最近はこれくらいのバランスがちょうど良いのかも知れないな、なんて思いながら、ラウンジ・チェアに揺られて います。

しかし、このアルバムは本当に音がやわらかいです。じゃんがらラーメンの角肉級です。やわらかい音というのはうまく説明できませんが、 クリームのアルバムなんかで感じるアレです。特にリズムセクションに やわらかさを感じます。アナログで聴くからかも知れません。マリオットフランプトンという2大ギタリスト&2大ヴォーカリストが 目立ちすぎているため、ベースのグレッグ・ライドリーGreg Ridley)の ヴォーカルは注目度が低くなりがちですが、彼のヴォーカルもじっくり 聴くとその深みと憂いを帯びた歌声には目を見張るものがあります。特にB面ラストのナンバーはグレッグ・ライドリー一世一代の名曲です。凡百のフォークグループが束になっても敵わないような一級品のコクと 深みがあります。秋の夕暮れ時に聴いたら最高の一品です。

日本では本当に人気のないグループですが、たっ・・たのむから、多くの ロックファンに聴いてもらいたいです。


(2004.02.20)