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第119回 YES "Close To The Edge"

YES - "Close To The Edge"
1972 UK ATLANTIC K50012
(Progressive Rock)

RARE:

Member : 

John Anderson(vo), Steve Howe(g,vo), Chris Squire(b,vo)
Rick Wakeman(key), Bill Bruford(ds)


Side (A)
1. Close To The Edge
i) The Solid Time Of Change
ii) Total Mass Retain
iii) I Get Up I Get Down
iv) Seasons Of Man



Side (B)
1. And You And I
i) Cord Of Life
ii) Eclipse
iii) The Preacher The Teacher
iv) The Apocalypse
2. Siberian Khatru



このアルバムを聴いてプログレの世界に迷いこんだ方は多いのではないでしょうか。
インパクトという点では『クリムゾンキングの宮殿』に一歩譲るものの、アルバム全体の調和/わかりやすさという点ではこちらの方が優っているのではないかと思います。

緑が湧き上がるような外ジャケットのデザインもさることながら、ダブルジャケットの内側に広がる世界も聴く者のイマジネーションを かきたてるもので、耳と眼の両方で楽しめる一枚です。その緑一色のジャケットから受ける印象そのままの世界が繰り広げられていく様は 圧巻の一言で、そのトータルな作りはまさにプログレッシヴ。緻密な構成だけでなく、それぞれの場面場面の曲のメロディが良いので、 聴いていて脳裏に染込んできます。

曲がわかれているようでわかれていない一気通貫な世界は、幼少の頃にみた『不思議の国のアリス』が深い森の中をさまよい歩いて いるような別世界を、4畳半の部屋にいながらにして体験することができます。かく言う私も、初めてこれを聴いたその時からこの典型的な プログレの魅力にすっかり取りつかれてしまって、今日に至っている次第です。

特にA面のサビの部分の盛りあがりは強く印象に残ります。
私がこれを初めて聴いたのは高校生の時だったんですが、学校に通う自転車の車上で、『ゲダアアアア・・、ゲッ・ダッ・アーン』なんて叫びながら通学したものです。(まわりからはまさかプログレを歌っているとは絶対に思われなかっただろうな・・・)

それからB-1。邦題『同志』。
ゴルゴ13に出てくるソ連のKGBみたいな邦題はもうちょっとなんとかならんのかな、と思いますがこれ本当に名曲ですね。6、7年前に来日した時のステージでもこれを演ったんですが、観客全員が水を打ったようにシーンとして耳を傾け、それでいて心はジーンみたいな感じでとても感動しました。

邦題といえば、もともとの歌詞が難しいからかも知れませんが、このアルバムの邦題ってちょっと固過ぎるような気がします。(おおきなお世話か。)

A面の『Total Mass Retain』なんて『全体保持』ですよ。。
『好きな曲は?』って聞かれて、『イエスの全体保持です。』なあんて答えた人がいたんでしょうか。因みにこのアルバムの国内盤についている対訳、どれも殆ど意味わかんないんですよ。(プログレの歌詞ってそういうもんなんかも知れませんが)例えば、B-1-i)の『人生の絆』からちょっと抜粋すると・・、

人間はすぐさま夢の答を想い当った
論題を日毎感知する花々をとどめて
らせんを描く目標を創造するため根拠が残される時に
取り戻され凝視された感動は同一のもの
あなたの人生の根源が完全に見える

いやあ、キてますなあ。
『論題を日毎感知する花々』ってもう最高ですね。卒業文集にこんな文章が書けたらカッコいいだろうなぁ。

でも、アルバムタイトルの『危機』というのはなかなか良い邦題だったんではないでしょうか。
がけっぷち』な〜んて題だったら台無しになるところでした・・。