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第87回 KAYAK "Merlin"

KAYAK - "Merlin"
1981 HOLLAND VERTIGO 6423 432
(Progressive Rock)

RARE:★★

Member : 

Max Werner(ds),Johan Slager(g), Katherine Lapthorn(vo),
Ton Scherpenzeel(key,vo), Irene Linders(vo),
Peter Scherpenzeel(b), Edward Reekers(vo)

 

Side (A)
1. Merlin
2. Tintagel
3. The Sword In The Stone
4. The King's Enchanter
5. Niniane (Lady Of The Lake)

 

Side (B)
1. Seagull
2. Boogie Heart
3. Now That We've Come This Ear
4. Can't Afford To Lose
5. Love's Aglow
 

 

オランダのプログレッシヴロックグループとして知る人ぞ知るKAYAK
彼等は73年のデビュー以来数多くの良質なシンフォニックな作品を世に送り出してきていますが、これは彼等のラストアルバムにあたるものです。
プログレ・シンフォニック系のグループの中でもこのKAYAKは出す作品のどれも水準が高く、特に1stから3rdあたりの充実ぶりは眼を見張るものがあります。
このグループやEARTH&FIREを聴いて、イギリス以外にも眼を向けることとなった方も多いんじゃないでしょうか。

ただ思いきったことを言わせてもらえば、これまでの作品に駄作があまりないものの、それでもインターナショナルなグループから較べるとどれもB級の域は出てはおらず、初期の作品が良いとは言っても所詮B級のシンフォニックグループの小品集といった感じなんですよね。

ところが、このラストのアルバムにして彼等は大化けします。
A-1のイントロからして全くモノが違う、っていう感じです。まさにシンフォニックの醍醐味ともいうべきウェット感と、水が滴るような哀愁のメロディが筆舌に尽くし難い出来です。今までの他の作品のようにリズムと一体となるような刻みのピアノではなく、学校の音楽室で雨の日にひっそりと演奏されているかのようなポロンポロンいう奥ゆかしいピアノです。

ヴォーカルもなぜ今までこういうふう出来なかったんだろうというくらい、優しげで物憂げで哀愁たっぷり。
そして静寂を破って登場するギターがこれまた躍動感に満ち溢れていて、勇気のしるし(なんじゃそりゃ)という感じです。こういうギターって一歩間違うとエイティーズみたい(といってもこの作品もよく考えるとエイティーズなんですが)になってしまうところですが、メロディが良く練られているお蔭でそういう堕落の仕方はしておらず、エコーの効き方なんかはかのイギリスのENGLAND(こっちも良いんですよ)を彷彿とさせます。まあ、それくらい本当に曲が良いんです。

A面は最後まで息をもつかせぬドラマティックなトータルコンセプトになっているんですが、メロディだけでなく曲展開も本当に素晴らしいと思います。
『立て板に水』と言った表現がオランダにもあるのか!?と思う位、次から次へと見事に転調していく様は、初めてプログレッシヴロックの素晴らしさを知った学生時代の感動を喚起させます。SWEDENのKAIPAとかの感動に近いものがありますね。

これでB面も同水準ならとんでもないことになっていたんでしょうが、残念ながらB面はとっても凡庸な出来。
後半でスタミナ切れを起こして足が止まったのか?みたいな感じです。(にわか知識です。すみません)
聴くんじゃなかった..と膝に手をついてうつむいている貴方の姿が眼に浮かびます。ロスタイムも含め何が起こるかは、終ってみるまではわからない、といった所でしょうか。

まあ何はともあれ80年代でもこれだけ素晴らしい音楽があるということを素直に喜びたい、そんな作品です。