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第74 CARRAIG AONAIR "Same Title"


CARRAIG AONAIR - "Same Title"

1977 WALES GWERIN SYW 206M
(Folk Rock)

RARE:★★★★★★

Member : 

John Honour(vo,g,tin-whistle), Paul Nicholas(g,mandolin),
Robert Mark
flute,tin-whistle), Paul John(violin,key),
Martin Thomas(b,dulcimer), Peter Mason(percussion)
Velvor Lewis(vo)

 

Side (A)
1. Gwraig y Crynwr
2. Cap O Las Fawr
3. Ochr Yr Bryn

4. Me Anvez Eur Goulmik
5. Dawns Y Fedwen Fal
6. Gower Song

 

Side (B)
1. Dacw Nghariad
2. Yr Aton Yn Yr Haf
3. Three Drunken Maidens
4. Troi A Llaw
5. Morris The Mole
6. Llydaw
7. Arrange Oie Vie
 

古代ヨーロッパの旧所・名跡(ぎゃくぎゃく)を思わせる素晴らしいジャケットに包まれたウェールズのフォークグループ。グループ名はなんと発音するのか全く分かりませんが、なんだかとってもいい感じですね。(?)

このアルバムは、一時期のウェールズブームの時にその存在が確認された(なんかニホンカワウソみたい)作品で、今までスノードニアの山奥深くに隠されていたんじゃないかと思うような神秘的な雰囲気が漂っています。
同じウェールズのフォークグループ、PERERINをも凌ぐその内容は一聴しただけではあまり印象に残らない素朴な展開なんですが聴けば聴く程にその魅力が滲み出てくる作品で、真夏の残業後のビアガーデンで飲む一杯目の中生(もうちょっと他に言い方ないんか..)のように身体に染み渡ってきます。
ネクタイをゆるめておしぼりで顔を拭きながら、プハーッとやっている眼鏡をかけたサラリーマン(特に営業)を思い浮かべて頂ければ、と思います。(台無しだな..)

ウェールズのフォークというとバーでギネスを飲みながらカタカタ踊る時に演奏されるいわゆるアイリッシュトラッドのような音楽を想像されるかもしれませんが、このアルバムはトラッド風味はあるものの、アイリッシュトラッドのような渇いた感じではなく、実にしっとりとした内容です。
そのしっとり感というのは高山の岩清水のようで、山の麓ではなく是非とも山頂近くでこそ聴いてもらいたい、そんな音楽です。

A面冒頭の出だしの笛の音。これがまた実に奥ゆかしい音でして、この瞬間に気分はすっかり世界遺産状態。四畳半の下宿の部屋で聴いていても、この曲のイントロだけで一気に視界が広がります。
ペルーのマチュピチュを上空から撮影している時にBGMとして聴いたらピッタリという感じの曲です。

そしてこのアルバムを更に奥ゆかしくしているのが謎(どこが?)の男性ヴォーカルで、きっとおかあさんに「もっと小さい声で静かに歌いなさい。下品なんだから。」と口酸っぱく言われてきたんじゃないかというようなささやきヴォイスで、空気が薄い高地っぽくてもうグンパツ地震です。(しょーもな)
絶対に平地に住んでいる人には出せない声ですね。

そしてB面ラスト。これは絶世の名曲。漸くフィメールヴォーカルも登場しますが、この人もちゃんとした教育を受けているらしく実に目立たないでしゃばらない登場の仕方です。
今まで部屋の外からこのアルバムの様子をじっと見つめていたんだけど、ここにきて遂に掟(なんの掟?)を破って一緒に歌い出してしまった、という感じで平田オリザの劇のエンディングのようです。

こんなアルバムが、日本まではるばる渡ってきて、今度はコレクター諸氏の部屋の棚奥深くに隠されると思うと、なんだかとても感慨深いものがあります。