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第67回 JERUSALEM "Same Title"


JERUSALEM - "Same Title"

1972 UK DERAM SDL6
(Hard Rock)

RARE:★★

Member : 

Bob Cooke(g), Ray Sparrow(ds), Lynden Williams(vo),
Bill Hinde(g), Paul Dean(b)

 

Side (A)
1. Frustration
2. Hooded Eagle
3. I See The Light
4. Murderer's Lament
5. When The Wolf Sits

 

Side (B)
1. Midnight Steamer
2. Primitive Man
3. Beyond The Grave
4. She Came Like A Bat From Hell

DEEP PURPLEのヴォーカリスト、Ian Gillanに見出された平均年齢20歳前後の若手5人組が72年にDERAMに残した唯一の作品。
このグループ名の持つインパクトも去る事ながら、なんといってもジャケットデザインの雰囲気が抜群です。
こんなにダークでカッコ良いジャケットってイギリスの中でもなかなかないんじゃないかと思います。
ジャケットのカッコ良さのせいかも知れませんが、昔からよく中古レコード店の壁に凄い値札がつけられて飾られていることの多いアルバムでした。

壁に飾ってあるのを、最初は指をくわえてみているしかなかったのですが、バイトで貯めたお金で漸く入手できた時は、なんだか自分が少しだけえらくなったような何とも言えない気分に浸ることができました。
特にこれを買った帰りの電車の中で、「もし今自分が通り魔かなんかに襲われたら、どんな風に報道されるんだろうか..」と訳のわからない想像をして一人ニヤついていた覚えがあります。

(以下想像、時間の無い方、この段落飛ばしてください。)
「今日夕方6時頃、若い男性が何者かに襲われ、意識不明の重体。警察では被害者の男性の身元割り出しに全力をあげていますが、所持品からは本人の身元が分かるものはなく、手にしていた中古と思われるレコードが唯一の手がかりです。尚、このレコードは外国の歌手のものと思われ、ジャケットにはジェルサレム(エルサレムと読めないところがミソ)と書かれています。」とか言われちゃって、それで、このニュースを見た心ある人達に「えっ?それってエルサレムじゃないの?しっかし、若いのに凄い音楽聴いてるな、この被害者は..」なんて言われて一目置かれたりしたら、なんてかっこいいんだろう!それがきっかけで有名になったりして、下宿先に取材が来たらどのレコードを自慢しようかなぁ、でもあんまり珍しいの持っているの世間にバレてもやだしなと、つり革につかまりながら、空想はとめどなく広がっていくのでした。(なんのこっちゃ..)
この時の私のは、多分ジャケットに負けず劣らず不気味だったと思います。

さて、肝心の内容の方ですが、音楽誌では「声量のないヴォーカルと素人ばりのリズムセクションが酷い」と酷評されまくっていて、私の周りのコレクター達からも「あれはちょっとなあ。」と「演奏がダメバンド」の烙印を押されているアルバムでもあります。
まあ、確かに演奏はヘタクソと言わざるを得ないかも知れませんが、私にとってはその下手な演奏を補ってあまりある独特の暗黒ムードが素晴らしく、それが類まれな個性となっていて大変魅力的なアルバムとなっています。声量のないヴォーカルも聴きようによっては、「断末魔の叫び声」(ちょっとムリがあるかな..)のようでもあり不気味なムードに一役買っております。
特にA面全体の流れは非常にダークで起伏に富んでおり、A-4のイントロなんかはその辺の山の中腹から蝙蝠とか狼とかそういう怖いやつがいっぱい飛び出してくるんじゃないかというくらいのヘヴィネスで、たまらない雰囲気です。
そしてA面ラスト。これがまたかっこいいんです。「狼のほえる夜」という秀逸な邦題がつけられていたようですが、ギターの音色がとにかく邪悪。

B面も同様の路線なんですが、特にB-2が良くて、これはもう、オカルト映画のBGMに使ってもらいたいくらいの曲ですね。特にベースが卑しい、もとい妖しいです。

くどいようですが、演奏力はなくとも雰囲気だけで聴けるアルバムなので、これを聴くシチュエーションとして最もお薦めできるのは、真夜中なのに腹が減ってきて「ちょっと遠いけど車でラーメンでも食べに行くか。」ってな時の夜中のドライブでしょうか。BGMにかけるとバッチリです。
特にそれが明かりのない山道を通ったりする場合でしたら、尚良いです。
(一体どこまでラーメン食べに行く気なんだろう?)

存在は知っていても敬遠してきた方も多いアルバムと思いますが、機会があったら是非一聴されることをお薦めします。