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第46回
HAIZEA
"Same Title"

HAIZEA - "Same Title"
1977 SPAIN BASQUE IOIOTS HG149LS (Folk Rock)

RARE: ★★★★

Member : Xabier Lasa(Kitarra Eta Flauta) , Grabiel F.Barrena(Kontrabajoa) ,
C.Busto Hondar(Perkusioa) , Txomin Artola(Kitarra Eta Abeslaria) ,
Amaia Zubiria(Abeslaria)
Side (A)
1. Broadatzen Ari Nintzen
2. Urzo Aphai Bat
3. Loa Loa
4. Goizeko Euri Artean
Side (B)
1. Ura Ixuririk
2. Oreina Bila
3. Arrosa Xuriaren Azpian

今回紹介するアルバムは、スペインのバスク地方のHAIZEAというグループの作品で、彼らの1stアルバムにあたります。
バスク地方というのはスペインとフランスにまたがるピレネー山脈近辺一帯のことをを指し、その地方の人々のみが話すバスク語はスペイン語とも全く異なる言語で、ヨーロッパ最古の言語とも言われています。

因みにこのHAIZEAというグループ名はバスク語で『風』を意味するそうで、そう思って聴くと、そんな気(どんなんだ)になってくるから不思議なもんです。

そんなバスク地方の音楽というと『単なる珍しいもの好きじゃないの?』と思う方もたくさんいらっしゃるでしょう。
私も最初はそう思っていましたが、ここで紹介するHAIZEAITOIZITZIAR等のグループは本当に素晴らしく、スペインの他の地方とは全く異なる独特の音楽性を有しています。

特にテクニカルでもないし、かといってとてつもなくドラマティックな展開をする訳でもない、でもなんとも言えない素朴な味が聴けば聴く程伝わってきます。
アルバムに針を落とした瞬間に、アルプスの少女ハイジに出てくるような草原、山並み、片田舎といった世界が一面に広がってきます。
実に優しい気持ちにさせてくれるアルバムです。

そして、このグループを語る上で忘れてはならないのが、紅一点の女性ヴォーカルAmaia Zubiriaの歌声です。
この人はItziarと並ぶバスクを代表する女性ヴォーカルといわれていて、聴く者を柔らかく包み込むような優しさと、時折見せる研ぎ澄まされた哀しさが絶妙のバランスを保っています。
バスクに対する神秘的なイメージのせいで、随分昔の人のような気がしてしまいますが、今もまだ活動をしているそうで、昨年でしたか、ソロアルバムを出していたとか。

さてアルバムの内容の方ですが、A-1は小春日和の中、ヒツジを一頭引き連れて草を一本手に持ち、山の小道を登っていくような、そんなのどかな雰囲気の曲です。小鳥の鳴き声すら聞こえてきそうです。

そして、彼女の女性ヴォーカルとしての魅力が最大限に発揮されているのが、A-3です。
とても暗くて哀しい曲なのですが、美しい響きの中に力強さも垣間見られ、バスクのフィメールものの中でも出色の出来となっています。

B-1は、夢うつつとした退廃的なムードで始まり、Amaiaの歌声が聴こえてくると、なんだか来てはいけないような花畑に迷いこんでしまった感覚で、遠い昔に見たことがあるような、でも遠すぎて思い出せない、そんな錯覚に陥ってしまいます。

アルバム1枚を通して感じられる、時間と場所を超越したような感覚が聴いている者の感性に強く訴えかけてきます。

この後にHAIZEAはもう1枚アルバムを発表していますが、そちらの方はこの1stの優しい部分を全て排除した暗黒の風といった内容になっていて、そちらの方を高く評価する人もいるようです。
フィメールフォーク・プログレ等の好きな方にはどちらも必聴の作品です。