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第39回
BLIND FAITH
"Same Title"

BLIND FAITH - "Same Title"
1969 UK POLYDOR 583 059 (Heavy Blues Rock)

RARE: ★★

Member : Eric Clapton(g), Steve Winwood(vo,key), Ginger Baker(ds),
Rick Grech(b,violin)
Side (A)
1. Had To Cry Today
2. Can't Find My Way Home
3. Well All Right

4. Presence Of The Lord

Side (B)
1. Sea Of Joy
2. Do What you Like

多少なりとも洋楽に興味のある方なら、Eric Claptonという名前を一度は聞いたことがあると思います。
この人は今でこそ普通のシンガーをやっていますが、もともとはブルースロックのギタリストとして世に出た人で、Jimmy Page、Jeff Beckとともにブリティッシュロックの3大ギタリストと言われていました。(というか今も)

今では既に伝説と化したYardbirdsの初代ギタリストとして60年代に活躍し、その後伝説のCreamを経て、今回ご紹介する伝説(伝説が多すぎ..)のBlind Faithに参画します。

Blind Faithが結成された60年代の後半というのは、有名なミュージシャン同士が新たに集まって作られる所謂『スーパーグループ』の結成ラッシュで、『AとBが同じグループで演ったら、どんな音になるんだろう』という音楽ファンの夢が現実になっていった時期でもありました。
(今でいう格闘技のPRIDEのリングのような感じでしょうか)

このBlind Faithのメンバーは、CreamからEric ClaptonGinger Baker、そしてTrafficからは『ブリティッシュロックの若きモーツアルト』と謳われたソウルフルなヴォーカリストSteve Winwood(この人もまだ現役で活動していると思います)、そしてFamilyからRick Grechという強力なラインナップとなっていて、当時のスーパーグループの中でも頭ひとつ抜きん出た存在だったのではないかと思います。

さて内容の方は、Creamから2人参加しているにも拘らず、Steve Winwoodのキーボードとヴォーカルが強烈な個性を発していて、Cream色(『クリームいろ』ではありません)を見事に抑制しています。
これだけの個性が集まると内容は雑然としたものになりがちなのですが、合体によるシナジー効果(わかって言っとるんかね)も抜群で、個人的にはCreamより良いと思っております。

A面1曲目はかなり(『り』にアクセント)渋いブルースロックで、多少Creamを引きずっているような感じがしないでもないです。
2曲目はややフォークタッチの隠れた名曲で、羽織袴姿で腰に刺した刀に手を掛けながら竹林の中を駆け抜けていくような、軽やかな感じの割にはしっとりとしていてでも明るくない、そんな神秘的な感覚の曲です。
ひとつめに入るシンバルの『シャッ』という音のところは鳥肌をこらえることができません。
3曲目はニューグループで新しいことをやってみようという意気込みが感じられる作品で、アップテンポで軽快なナンバーとなっています。

そしてハイライトのA-4。これは歌メロの部分は実に普通の曲で、『まあ確かに名曲ですわ。』といった感じなのですが、曲が2番まで終わると突然曲調が変わったかのように金属質で、ゴリゴリのギターソロが始まります。
なんか固い物を強く噛んでいるようなヘヴィこの上ない展開で、ハードロックファンにとってはこれはたまりません。
出だしの『あぉわ、かぉわ、かぉわ(ギターの音です。念のため)』というところが特にカッコ良く、ついつい興奮で鼻息が荒くなってしまいます。
更に、ソロの後半部分にはGinger Baker先生も乱入してきて、終わった後はまるで
台風が去った翌日のような脱力感です。

B面の1曲目もこれまた素晴らしくて、どこまでもつややかに伸びていくSteve Winwoodの魅力爆発で、これをきちんと歌えた暁には、とても楽しい人生が待っているに違いありません。
A面ではずっと脇役に甘んじて我慢していたRick Grechのヴァイオリンが実に素晴らしく、すごく天気がよくて空が高い日のような爽快感です。

アルバムラストのB-2はちょっと長い曲で、この時代を感じさせる即興演奏的な感じです。
後半部分にはロックファンなら必ず正座して最後まで聴かないといけないと言われているGinger Baker先生のドラムソロが入っていて、『聴けえ、おらあ!』と言われているようで、逆らうことができません。

ジャケットカバーもなかなかそそっていて、などと軽々しく言ってしまうと変態扱いをされかねないので注意が必要です。
この少女ひとりだけ映っている写真なら結構ヤバいものがあるのでしょうが、彼女が手に持っているヒコーキがとんこつラーメンの紅しょうがのようなアクセントになっていて、この写真を変態にならないギリギリのところで保ってくれているような気がします。
バックの草原の風景は、Pink Floydの『原子心母』の撮影に使われた草原と同じ場所に違いない、と私は勝手に思っているのですが..。