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第33回
WALLENSTEIN
"Cosmic Century"

WALLENSTEIN - "Cosmic Century"
1973 GERMANY Kosmiche Musik 58.006 (Progressive Rock)

RARE:

Member : Jurgen Dollase(key,vo), Harald Grobkopf(ds), Dieter Meier(b),
Bill Barone(g), Joachim Reiser(violin)

Side (A)
1. Rory Blanchford
2. Grand Piano
3. Silver Arms
Side (B)
1. The Marvellous Child
2. Song Of Wire
3. The Cosmic Couriers Meet
4. South Philly Willy

ヴァレンシュタインと読みます。ドイツのグループです。
ドイツのプログレというとドロドロ/グニャグニャの『これぞプログレッシヴ』といった難解(というかつらい)なものが多いので、ドイツを極めるには相当の覚悟が必要となってきますが、このヴァレンシュタインはちょっと違います。

A面が3曲にわかれていますが、実際には殆ど続きのような感じになっていて、劇的でいてドラマチック(おんなじ?)、それでいて深みがある、まるで極端に出来の良い本をたまたま読みかけてしまって、気がついたら一気に読み終えてしまった、そんな内容です。
タイプは違いますが、COLOSSEUMの『Daughter Of Time』のA面に匹敵する傑作A面です。

静と動のコントラストも抜群で、静かな部分はグランドピアノが深く、盛りあがってくるとヴァイオリン(これがまた好(ハオ)です)とギターが絶妙に溶け合います
A面の出だしの部分の起伏に富んだイントロを聴いただけで、これから始まる壮大なドラマに期待に胸が高まってきます。颯爽と船出していく勇敢な大軍の指揮をとっているようなそんな昂揚感を味わうことができるでしょう。
またヴォーカルが、冬山の朝、白い息を吐きながら囁きかけているようなそんな清廉な感じで、やや控えめなところにも好感が持て、歌い方がこの物語にピッタリです。

A−1で前半のクライマックスが終った後に静かに始まるA−2のピアノプレイは絶品。泣きのピアノといった感じで、鳥肌がたつのをこらえる事ができません。
一通りソロプレイが終った後の暖かな音色の部分は、トンネルを抜けてみたら信じがたい美しい光景が広がっていてあまりの素晴らしさに言葉を失ってしまった、という『世界の車窓』のような感動的な場面です。

そして最大の難関A−3は泣き泣きのヴァイオリンで幕を明けます。
ヴァイオリンの後はピアノ、ドラムスの調べ、そしてそれに続いて登場するギターがこれまた素晴らしく、手編みのセーターを超音速で一心不乱に編み上げていく(編んだ事ないけど)ような演奏で、どんどん天高く舞いあがっていきます。
昇りつめたギターの姿が雲の彼方に消えていったかと思うと、またしても優しげなヴォーカルの調べで、もうこの甘いの辛いの熱いの冷たいのという波状攻撃にノックアウト間違いなしです。
このヴォーカルの調べが終ると、いよいよ本当のクライマックス(またクライマックスかい?)がやってきます。
本当のクライマックスは最後だけあって全ての楽器が一丸となった力強いもので、ユーロ史上指折りのドラマチックさです。思わず『君ら自らシンフォニックオーケストラを名乗っている(ジャケットの裏にそう書いてある)ようだが、正式にその称号を与えて進ぜよう』という気分になります。

さてB面ですが、すみません、ほとんど真面目に聴いたことがありません。
わざわざ聴かなくて良いと思います。(オイオイ)
このアルバムはA面だけで良いのです。でもそれだけで買いです。

アルバムジャケットですが、どこかの発電所のようなものをバックにメンバーが写っていて、全体に青っぽくなっているのですが、特筆すべきはバックにヒツジが写っている点です。
数えられるだけで34頭写っています。意外と皆さん気付いておられないようです。
表と同じ場所が写っている裏ジャケにはヒツジが1頭もいないのです。
だから何なの?と言われると困るのですが、このアルバムをお持ちの方はもう一度良く見て頂いた方が良いと思います。