BACK TO HOME

第30回
GUN
"Same Title"

GUN - "Same Title"
1968 UK CBS 63552 (Hard Rock)

RARE: ★★★

Member : Adrian Curtis(g,vo), Paul Curtis(b,vo), Louis Farrel(ds)

Side (A)
1. Race With The Devil
2. The Sad Saga Of The Boys
    And The Bee
3. Rupert's Travel
4. Yellow Cab Man
5. It Won't Be Long
Side (B)
1. Sunshine
2. Rat Race
3. Take Off

ブリティッシュハードロックの事の起こりを語るときに、このGunというバンドは絶対にはずす事ができません。
Jimi HendrixYardbirds等の大物アーチスト達の60年代後半の台頭が栄光の70年代ブリティッシュハードロックシーンを形成したことに異論はありませんが、このGunのようなB級グループがブリティッシュロックのアンダーグラウンドシーンを支えていた事も忘れてはなりません。
B級グループだからと言ってあなどれないのが、ブリティッシュロックの層の厚いところです。

ところで、80年代の後半にシンコーミュージックから発売された『ルーツ・オブ・ブリティッシュロック』という本を皆さんはご存知でしょうか?
実はこの一冊の本が私の人生のひとつの転機となりました。(またそんな大袈裟な...)
80年代というMTV全盛期であるにもかかわらず、頑なに70年代のハードロックだけを聴いている、それはそれはイヤな大学生だった私には、毎月通っていたその手の中古レコード屋の新入荷だけが唯一の情報源でした。

カタログ化されたディスコグラフィーが掲載され、しかもマイナーバンドの系統までわかりやすく解説してあったその本を手にした時の戦慄と衝撃は、今でも忘れる事ができません。
他の人が知らないような幻のアーチストとか廃盤レコードに関する知識がそれなりに身につき、生半可な知識でイキり始めたばかりの時期だったので、知らないレコードだらけのその本は本当にいい薬になりました。

入手困難度合いもわかりやすく記載してあるので、マニアの方にも充分刺激的な内容だったと思います。そしてその中でも、ジャケット写真の邪悪なカッコ良さとマイナーっぽい雰囲気で最も私の目を惹いたのがこのGunだったのです。

実際に初めて音を聴いた時には、A−1のイントロの『これがハードロックの歴史の始まりだ』と言わんばかりの前近代的なコーラスと、息つく間もなく切りこんでくる徹底的なギターリフ攻撃のあまりのカッコ良さに、鳥肌がたったのを覚えています。
このA−1の曲は当時日本でもシングルとして発売されていたようで、邦題も『悪魔天国』というピッタリのものでした。

このアルバムを購入した当時、私はまだ学生で一人暮しの下宿生活を送っていたのですが、麻雀をやるメンツが常に入り浸っている殆ど雀荘のようなところで暮らしていました。(所謂溜まり場)
麻雀をやっている時のその部屋では、テレビからは『スクールウォーズ』の再放送が流れ、そしてBGMとしてはこのGunが流れているという、もう
親が見たらもう卒倒間違い無しのサイケな毎日でした。
麻雀のメンツにもロック好きな人間がおり、彼なぞは私の下宿でかかる70年代の音楽に興味を示す事もあったのですが、そんな中でもこのアルバムは結構人気が高かったと記憶しています。

60年代後半の作品なので完成度という点では今ひとつですが、A面の1曲目から3曲目までは桶狭間の織田信長軍のような破竹の進撃といった感じで、怒涛の勢いで一気に聴かせてくれます。
B面になると、ちょっとキレの良くない曲もあったり、昼1時頃のメロドラマの音楽(しかも昔の)のようなバラッド(B-2)が入っていたりで、A面の出だしの勢いは続かなくなってきます。

でもまあA面の勢いだけでも、このアルバムは名盤の域には到達しているでしょう。

この後、Curtis兄弟は2nd(1st程ではないがこちらも悪くはないです)を発表し、より高度なリフ攻撃をするために発展的解散後、伝説のThree Man Armyを結成します。
Three Man Armyでは、Curtis兄弟はGurvitzと名乗るようになり、こちらは70年代ということもあってより重厚に、そして完成度も高くなっています。
Three Man Armyについてはいずれ紹介する予定です)