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第26回
STEELEYE SPAN
"Hark! The Village Wait"

STEELEYE SPAN - "Hark! The Village Wait"
1970 UK RCA SF8113 (Folk Rock)

RARE: ★★★

Member : Tim Hart(g,vo) , Ashley Hutchings(b) , Maddy Prior(vo) , Gay Woods(vo) ,
Terry Woods(vo,g
)

Side (A)
1. A Calling-on Song
2. The Blacksmith
3. Fisherman's Wife
4. Blackleg Miner
5. Dark-eyed Sailor
6. Copshawholme Fair
Side (B)
1. AIl Things Are Quite Silent
2. The Hills Of Greenmore
3. My Johnny Was A Shoemaker
4. Lowlands Of Holland
5. Twa Corbies
6. One Night As I Lay On My Bed

ブリティッシュフォークの双璧としてFAIRPORT CONVENTIONと並び称されるのが、このSTEELEYE SPANです。
このアルバムでフィメールものに目覚め、フォーク/トラッドの世界に足を踏み入れた人は結構多いと思います。

某音楽誌でこのグループの3rdアルバムが紹介されているのを初めて目にした時は、それまでハードロックやプログレのレコードばっかり聴いていた私は、『ドラムは無しです』と書いてあったのを見て、それだけですっかり腰がひけてしまい、実際にこのグループのレコードを耳にするには更に何年もの年月を要したのでした。

日本の70年代ブリティッシュロック のコレクターにありがちなのですが、最初にSPIROGYRAとかTUDAR LODGEといったレア物からフォークの世界に入り、順々に買い揃えていって1年くらいしてからSTEELEYE SPANFAIRPORTという基本に到達するというとてもへんてこりんな現象がよく起こっているようです。
これではまるでJEFF BECK GROUPの『TRUTH』は知らないけどVERTIGOWARHORSEは持っているというようなもので、本来はフォークのレア盤を追求する前に是非ともクリアしておいてもらいたいレコードです。
と、えらそうな事言っている私自身実はそういう順番だったのですが...。

STEELEYE SPANというグループは初期の3枚が名盤と言われておりますが、2ndと3rdは割とよく似た感じの作風で、非常にトラッドがきつい作品と言われています。
『トラッド』と言われてもピンと来ない方は、映画『タイタニック』の前半の方で、レオナルド・ディカプリオが主役の女の人(すみません、名前知りません)と地下に降りて行ってタップダンスみたいに盛りあがるシーンを覚えていますか?
あそこでかかっている音楽がまあトラッドに近いといえば近いので、そんな風に思ってもらえればOKです。
トラッドがきついというのは大変説明が難しく、10.9新日本プロレス×UWFインターナショナル対抗戦の時に、田村潔司選手ひとりが道場でサンドバッグを蹴っていたというそういう厳しさに通じるものがあって、『う〜ん、確かに悪くはないんだけど...』というそんな感じです。(これじゃ、どんな感じか全然わからないですか?)

なのでバリバリのSTEELEYE SPANのファン(余りそういう人にお会いしたことはありませんが)の人にとっては2nd、3rdの方が評価は高いようですが、私にとってはドラムスも入っているこの1STが最高作です。
A−2の気高いドラムスで始まるイントロは特に素晴らしく、FAIRPORTの『Matty Groves』の出だしのヴァイオリンの気品に相通じるものがあります。
言い忘れましたがこのグループのヴォーカルは、この後WOODS BAND GAY & TERRY WOODSと活躍するGay Woodsと、STEELEYE SPAN以前にはTim Hartとコンビを組んでいたMaddy Priorという2人の女性ヴォーカルをフィーチャーしている非常にぜいたくなグループでもあります。

そんな訳で、初期3枚の中でもそれほどトラッドがきつくないこのアルバムには、非常に叙情的で心温まる優しさが全体に満ち満ちていて、日当たりの良い縁側で子犬を撫でながら聴いたら最高の気分になれます。