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第11回
BECKETT
"Same Title"

BECKETT - "Same Title"
1974 UK RAFT RA 48502 (Hard Rock)

RARE: ★★

Member : Robert Barton(g,vo), Keith Fisher(ds), Tim Hinkley(key),
Kenny Mountain(g,vo), Ian Murray(b), Terry Wilson-Slesser(vo)

Side (A)
1. Once Upon A Time The End
2. Rolling Thunder
3. Rainclouds
4. Life's Shadow
5. New Dawn Chorus
Side (B)
1. A Rainbow's Gold
2. Don't Tell Me I Wasn't Listening
3. Green Green Green
4. My Lady
5. True Life Story

哀愁のブリティッシュロックというと皆さんは何を思い浮かべますか?
PROCOL HARUM、それともENGLAND?私は何といってもこのBECKETTです。
音的には枯葉の如き味わいのストリングスが全編に配された、典型的な70年代室内音楽型ブリティッシュロック(?)という作風なのですが、A面1曲目に針を落とした瞬間から溢れ出る涙を止める事ができません。

哀愁漂うとは言ってもRENAISSANCEのようなドラマティックな哀愁ではなく、英国特有のこもったようなくすんだような雰囲気で、どちらかというと一聴した感じではやや地味な印象すら受けます。
人それぞれ感じる印象に違いこそあれ、遠い昔に忘れてしまった大切な何かを思い起こさせてくれるような作品ではないでしょうか。なんとも言えない渋いジャケットデザインも、このレコードの内容を良く表していると思います。

このグループのメンバーが目指していた物は、恐らくもっとオーソドックスな正統派ブリティッシュロックだったのかもしれませんが、ストリングスを挿入した事によって彼らの意図すらも遥かに超えた奥行きと気品が保たれています。
特に気の弱そうなB級のヴォーカルが実に良い味を出しています。
これが唯一の作品であるという点も、本作の芳香をより崇高なものにしているような気がします。

ジャンルとしてはブリティッシュハードロックと言う事になるのかもしれませんが、SPIROGYRASTEELEYE SPANのようなブリティッシュフォークにもちょっと飽きたという方々、BEGGARS OPERAのような音が好きだけど最近これといったレコードに巡り合っていないという、バリバリの英国ロック好きの方々、そんな人達にはきっと気に入ってもらえるのではないかと思います。
余談になりますが、このレコードはよっぽど売れなかったからなのかカット盤が非常に多く、無傷の状態のものはなかなか出てこないようです。
何はともあれ、とにかくブリティッシュロックファンの方は必携です。